1. 7)パルダリウム手法による植物展示
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

7)パルダリウム手法による植物展示

鈴木愛子*1・稲田幸太*1・具志堅江梨子*1・小原弘之*1・端山 武*1

1.はじめに

(一財)沖縄美ら島財団が受託管理を行っている熱帯ドリームセンターでは、一年を通して熱帯・亜熱帯性植物を展示し、利用者の満足度向上に努めている。一方で、利用者は常に新しい展示手法を求める傾向にあり、飽きさせない展示を展開させていく必要がある。そこで、熱帯ドリームセンターの利用促進及び魅力向上を図ることを目的に、近年急激な人気を見せている、水槽の中で自然風景を作り出す「パルダリウム手法」を用いた植物展示を行ったので報告する。

2.展示方法及び製作過程

1)展示方法

展示には、長さ120cm、高さ145cmで前面に扉をつけた密閉型(以下水槽①:写真-1)と、長さ90cm、高さ100cmで前面を開放した開放型(以下水槽②:写真-2)の2種類の水槽を用いた。水槽①では、沖縄に生育する在来種を主に、オニホラゴケやヤナギニガナなどの渓流沿いに生息する植物やユウコクランやオキナワセッコクなどのラン科植物を植栽し、水槽②では、冷涼な地域に自生するネペンテスの仲間などの食虫植物を主に植栽した。水槽①、②共に、植栽イメージとして渓流や岩場などの風景を再現した水槽を製作した。

2)水槽システム及び造作物

水槽①、②共に、水槽内の水温を一定にするための冷却装置を設置し、ポンプを用いて水を循環させる仕組みとした。また、渓流沿いの風景で必要な岩場の再現にはFRP素材や発泡ウレタンなどの軽量素材を用いた擬岩を製作した(写真-3)。照明については、飼育水槽用の照明を用いた。

  • 写真-1
    写真-1 左:沖縄在来植物植栽水槽 右上:オニホラゴケ 右下:ユウコクラン
  • 写真-2
    写真-2 左:食虫植物植栽水槽 右上:Nepenthes ampullaria 右下:Pinguicula ‘Smiling Beauty’
  • 写真-3
    写真-3 擬岩製作状況(左:バーナーで変形、右:発泡ウレタンで製作した擬岩

3.経過及び今後の課題

1)経過

水槽①については、平成31年4月から令和1年12月までの約9か月間展示を行った。展示期間中、ユウコクラン、キンギンソウ、リュウキュウサギソウなどのラン科植物については水槽内で開花し、新梢が展開するなど良好に生育したが、ヤナギニガナ、オニホラゴケ、カゴメランについては根元から腐敗し枯死した(写真-4)。縦長の壁面への植栽には、壁面パネル内に直接植物を埋め込むか、ヘゴ板を部分的に取り付けて段差をつくり、そこへピン留めで植栽するなどの方法をとったが、植物が剥がれ落ちるなど課題が残った。また、照明についても水槽下部は光量が足りず、徒長する傾向にあった。
水槽②については、令和元年11月から現在まで展示を行っている(写真-5)。水槽②では水槽①で課題となっていた垂直面での植栽方法を改良し、擬岩への植栽に変更したこと、照明を2基に増やしたことなどから、概ね生育良好だが、セファロタスやドロセラの仲間など一部の食虫植物は腐敗枯死するなど、水槽内での栽培には不向きな種類もあった。

  • 写真-4
    写真-4 左:ユウコクラン新芽展開 右:ヤナギニガナ葉の黒変
  • 写真-5
    写真-5 展示半年後の状態 右:Nepenthes sp.
2)今後の課題

水槽を利用した植物展示では、空中湿度の高い環境を好む植物を用いることが可能なことや、水を循環させた管理方法により潅水が不要なことからローメンテナンスで栽培展示を行うことができる。さらに、水槽の中に風景を作りこむことで、小さいスペースで臨場感のある植栽展示ができることから、これまでは開花期のみ鉢展示を行っていた植物や小型の植物などを常設で展示することが可能となる。しかし、長期間にわたり展示植物を良好な状態で維持管理するには、照明や水循環システム、植栽資材や方法などハード面での改良が今後も必要である。また、植物種数及び展示テーマのある水槽を増やし、パルダリウムコーナーとしての展示充実を図るとともに、展示効果について評価アンケートを行い、利用者満足度への貢献度を図る必要がある。

4.外部評価コメント

展示手法の多様化を広げ、実験段階ではあるが、今後各種の機会・場面で、適用が可能と思われる。
実際に見た観賞者(造園関係者、一般客など)の意見をアンケート等により収集し、参考にするとよい(池田顧問:琉球大学 名誉教授)。


*1植物研究室

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