1. マルモンツチスガリの麻痺毒を解明 新規麻痺ペプチドの発見と機能解明に関する研究成果

プレスリリース

マルモンツチスガリの麻痺毒を解明 新規麻痺ペプチドの発見と機能解明に関する研究成果

2026.09.09

一般財団法人沖縄美ら島財団総合研究所(沖縄県本部町)、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人熊本大学、国立大学法人東北大学の共同研究グループは、マルモンツチスガリ(ギングチバチ科の狩バチ)が毒を作るときに働く遺伝子と毒液の成分を解析した研究成果を国際学術誌で発表しました。

マルモンツチスガリ
マルモンツチスガリ

ハチ毒などの生物毒および関連する遺伝子は、生物農薬や医薬品開発などの観点から世界中で研究が盛んです。これまで、アリ、ミツバチ、スズメバチについては、毒の成分、性質、遺伝子が広く解明されてきました。特に狩バチは、毒の成分や性質および遺伝子と、狩をする生態との関連性において広い興味で研究されてきましたが、ツチスガリについては、これまで注目されたことがありませんでした。
本研究では、マルモンツチスガリの毒を生産する器官を摘出し、そこで働いているすべての遺伝子(トランスクリプトーム)と含まれている全たんぱく質(プロテオーム)を調べて、統合的に解析しました。その結果、進化的に近いアリ及びミツバチからも報告されていない新規ペプチドおよび新規タンパク質11種(Cj1-11)の遺伝子を発見しました。加えて、毒液中の主成分の一つとして発見したCj 2ペプチドを化学合成し、ミールワームに投与したところ麻痺しました。一方で、Cj 2はアリやミツバチ毒に検出される抗菌活性、溶血活性や、他の狩バチに検出されるニコチン性アセチルコリン受容体を制御する活性を示しませんでした。このような、特異な麻痺毒とその遺伝子の存在は、マルモンツチスガリがアリやミツバチと近い遺伝的背景を持ちながらも、「獲物を麻痺させて狩りをする」生態の獲得を基盤に、麻痺ペプチドの遺伝子を独自に進化させたことを示唆しています。

補足

  • マルモンツチスガリは東アジアの温帯から亜寒帯に生息します。メスはコハナバチを捕まえ、産卵管が変化した針を刺して毒液を注入します。土を掘って作った巣に麻痺した獲物を運び産卵します。ふ化した幼虫は獲物の体液を吸って成長し、最後には獲物を食べつくして蛹になり、羽化して成虫になります。
  • 沖縄地域の生態不詳の狩バチや寄生バチを対象にした類型研究の推進は、沖縄地域の豊かな生物相の理解を推し進め、地域の魅力の発信に貢献します。沖縄県における世界自然遺産を含む豊かな生物相は、沖縄県が誘致推進している国立自然史博物館設立地の適性の1つとされています。

発表雑誌

雑誌名

  • Toxins

論文名

  • Integrated Venom Gland Transcriptomic and Venom Proteomic Analyses of the Digger Wasp Cerceris japonica (マルモンツチスガリ毒嚢のトランスクリプトームおよびプロテオーム統合解析)

著者名

  • Kazuma Kohei, Naoki Tani, Katsuhiro Konno, Migaku Kawaguchi, and Hidetoshi Inagaki. (数馬恒平、谷直紀、紺野勝弘、川口研、稲垣英利*) *責任著者

受理日

  • 2026年7月13日

論文リンク

一般財団法人沖縄美ら島財団について
一般財団法人沖縄美ら島財団は、「美らなる島の輝きを御万人(うまんちゅ)へ」という経営理念のもと、沖縄美ら海水族館をはじめ、海洋博公園や首里城公園など沖縄の豊かな自然や文化資源を活かした公園施設の管理運営を担う法人です。財団内に設置された総合研究所を中心に、亜熱帯性動植物や海洋生物に関する専門的な調査研究、技術開発、教育普及活動を推進しています。沖縄美ら海水族館においては、多様な海洋生物の長期飼育を基盤に、生理・繁殖・健康管理に関する研究を継続的に実施し、飼育下で蓄積された科学的データを活用して動物福祉の向上と海洋生物保全に取り組んでいます。


 
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